ゲームでは数十年にわたって AI という用語が使われてきました。こういったノン プレイヤー キャラクター (NPC) は従来から厳格なルールに従って知性を模倣し、導かれたストーリーに従い、プレイヤーとスクリプト通りの対話を行うように設計されていました。しかし、インテリジェントな言語モデルの登場により、ゲーム AI は真の知性による大規模な改良の準備が整っています。
CES 2025 で、NVIDIA は NVIDIA ACE 自律型ゲーム キャラクターの導入により、ゲーム AI を再定義しました。
2023 年に初めて導入された NVIDIA ACE は RTX で高速化されたデジタル ヒューマン技術であり、生成 AI を用いてゲーム キャラクターに生命を吹き込んでいます。
NVIDIA は現在、対話型 NPC から AI を使用して人間のプレイヤーのように知覚し、計画を立てて行動する自律型ゲーム キャラクターへと、ACE を拡張しています。生成 AI を搭載した ACE は、プレイヤーの目的を理解して支援する仲間や、プレイヤーの戦術に動的に対抗する敵が登場する、生き生きとしたダイナミックなゲーム世界を実現することができます。
これらの自律型キャラクターを実現するのは、現実的な意思決定に必要とされる人間のような頻度で計画を立てることができる新しい ACE 小規模言語モデルと (SLM) と、AI キャラクターが音声キューを聞きとり、周辺環境を認識できるようにする視覚および音声のマルチモーダル SLM です。
NVIDIA は、ACE 自律型ゲーム キャラクターをゲーム タイトルに組み込むため、大手のゲーム開発会社と提携しています。『PUBG: BATTLEGROUNDS』、『inZOI』、『NARAKA BLADEPOINT: Mobile PC Version』では人間のような AI プレイヤーおよび仲間とのやり取りを楽しみ、『MIR5』ではプレーヤーのプレイ スタイルに合わせて適応する学習能力のある AI の敵と対戦できます。また『AI People』、『Dead Meat』、『ZooPunk』では、AI 搭載の NPC により実現した新しいゲームプレイ メカニクスを体験してください。
まず、人間がどのように決断を下すかというシンプルなモデルから始めましょう。
意思決定の核心には、「次に何をすべきか」という同じ質問を繰り返し自問する、自分自身との内なる会話があります。
この質問に答えるには、重要なデータがいくつか必要です。
例えば、電話が鳴っている音が聞こえたとします。これは感覚により生じた外部からの知覚です。電話に出るべきでしょうか?
あなたは電話を待っていたことを覚えているため、それを逃したくないと思います。動機と記憶が組み合わさり、次に何をするか決定するために必要なすべてを提供します。これが認知です。
電話に出ることを選択します。これは認知の結果としての行動です。
このような知覚、認知、行動はよく記録に保存され、後で意思決定を行う際に思い出されます。
従来のルール ベースの AI システムでは、開発者がこういった人間の特性をコード化により模倣するのは不可能です。潜在的なシナリオの数が無限だからです。しかし、生成 AI と、人間が世界に対して応答する方法を説明する、何兆もの文章で訓練された大規模言語モデルを用いることで、人間のような意思決定をシミュレートすることができます。
NVIDIA ACE の自律型ゲーム キャラクターは、知覚、認知、行動、レンダリングのため一連の生成 AI モデル スイートによって動作しているため、開発者は、ゲーム内でより人間らしく考え、感じ、行動する AI エージェントを作成することができます。
SLM が適切な意思決定を行うには、自律型ゲーム キャラクターに高頻度で知覚データを提供する必要があります。このような知覚データを取得するために、いくつかのモデルと技術が使用されています。
当社の e スポーツ研究によると、ほとんどのゲーマーは 1 秒に 8 〜 13 回の「サブ ムーブメント」という小さな判断を行っています。これには目標方向の修正やスキルの使用タイミングの決定といったシンプルなタスクや、戦略の再評価の開始など、より複雑なタスクが含まれます。
一般的に、認知タスクは非常に頻繁に発生するため、レイテンシーとスループットの要件を共に満たすために小規模言語モデルが必要です。ACE SLM の認知機能には、以下のものがあります。
行動には音声、ゲーム内のアクション、長期的な計画など、多様な形態があります。効果的に行動を実行するため、開発者はモデルと戦略を組み合わせることができます。
自律型ゲーム キャラクターが以前の知覚、行動、認識を思い出せるようにするには、記憶が重要です。また、即時の文脈にはあまり関係はないかもしれませんが、長期的な目的や動機を追跡するのにも役立ちます。検索拡張生成 (RAG) という手法を使用し、開発者は類似性検索を実行して、現在のプロンプトに関連する情報を「記憶する」ことができます。
上記のモデルと手法の組み合わせを使用し、当社のパートナーは最初の自律型ゲーム キャラクター体験を作り上げました。未来を垣間見てみましょう。
NVIDIA ACE のキャラクターは自律的なチーム メンバーとして行動し、命令に従い、戦利品を集めて共有し、敵と戦います。周囲で発生する動的なイベントを独自に知覚して理解することによって戦略的な提案を行い、プレイヤーからの追加の指示や支援なしに、行動や命令の完了に必要な措置を講じます。
AI の力により前述のすべてを活用するこのようなキャラクターの自律性と能力は、通常は人間のチーム メンバーとしか体験できないような、ダイナミックなゲームプレイとの出会いを生み出します。
『PUBG: BATTLEGROUNDS』は、プレイヤーが最後の一人になるまで戦うバトルロイヤル ゲームです。激しい戦術的なゲームプレイ、リアルな戦闘シナリオ、そして広大なマップを特徴とする『PUBG: BATTLEGROUNDS』は、2017 年の発売以来、文化的な現象となり、現在も毎日 Steam で最もプレイされているゲームの上位 5 つの中に入っています。
2025 年には、『PUBG IP Franchise』が PUBG Ally という共同プレイ可能なキャラクター (CPC) を導入します。NVIDIA ACE で構築された Ally は、Mistral-Nemo-Minitron-8B-128k-instruct の小規模言語モデルを使用して、AI チームメイトがゲーム固有の言語を使用して通信し、リアルタイムで戦略的な提案をして、戦利品を見つけて共有し、車両を運転し、ゲームの豊富な武器を使用して他の人間プレイヤーと戦うことができます。
「『PUBG IP Franchise』の PUBG Ally と、NVIDIA ACE で構築された世界初の CPC (共同プレイ可能なキャラクター) として登場する『inZOI』の Smart Zoi は、新しくユニークな体験を解き放ちます。KRAFTON では、ACE 自律型ゲーム キャラクターの可能性と、AI がゲーム制作を強化する方法について非常に期待しています」- Kangwook Lee 氏、KRAFTON ディープラーニング部門責任者
2025 年 3 月に、NetEase は NVIDIA ACE で『NARAKA: BLADEPOINT MOBILE PC VERSION』用に構築された AI チームメイト機能をリリースします。また、2025 年末には、『NARAKA: BLADEPOINT』の PC 版にも追加される予定です。『NARAKA: BLADEPOINT』は毎週 Steam で最もプレイされているゲームの上位 10 に入っており、『NARAKA: BLADEPOINT MOBILE』は、スマートフォン、タブレット、PC で毎週何百万人ものプレイヤー数を誇っています。
『NARAKA: BLADEPOINT MOBILE』では、最大 40 人のプレイヤーが近接戦闘を中心とするバトルロイヤルで、広大な環境でユニークな移動能力、戦闘スキル、極東をイメージした武器を使用して戦います。プレイヤーは勝利を目指してコンボ、パリィ、敵へのカウンターにこれらの武器を使用します。
NVIDIA ACE を搭載した AI チームメイトは、あなたのパーティーに参加して共闘し、必要なアイテムを見つけて装備を交換するほか、アンロックするスキルに関して提案を行ってプレイヤーの勝利に貢献するようプレイします。
「NVIDIA は、ゲーム開発者が AI 技術で予想される限界を超えることを可能にします。『NARAKA: BLADEPOINT MOBILE PC VERSION』の NVIDIA ACE では、AI 自律型キャラクターを作成できます。これにより、デバイス上で動作する AI 自律型チームメイトを創り出すことで、壮大な戦いでプレイヤーを自然にサポートすることができます」– Zhipeng Hu 氏、Thunder Fire BU 責任者、NetEase corp. SVP
KRAFTON の『inZOI』は、Steam で最も多くウィッシュ リストに登録されているゲームの上位 10 タイトルに入っています。このライフ シミュレーション ゲームでは、プレイヤーがゲーム世界のあらゆる側面を変え、独自のストーリーと体験を作り上げることが可能です。Unreal Engine 5 を使用して開発された『inZOI』のリアルなグラフィックにより、ゲームの使いやすい作成ツールを使ってプレイヤーが自由に想像を視覚化でき、キャラクターの外見と服装のカスタマイズや、自由に移動できる豊富な家具と建造物を使って夢の家の作成ができます。
NVIDIA ACEを使用して構築された『inZOI』は、これまで見たことがないほど応答性に優れ、リアルな CPC (Smart Zoi, Co-Playable Characters) を導入します。プレイヤーは、都市内のすべての ZOI が各自の人生の目標を追求しながら自律的に行動し、環境や周囲で起こるイベントに反応する、より深いレベルの没入感と複雑な社会的状況を楽しめる包括的なコミュニティ シミュレーションを体験できます。
。以下のビデオでは LM (言語モデル) 導入前と導入後のシナリオを比較し、『inZOI』におけるキャラクター間のやり取りと動作に与える最先端のオンデバイス LM 技術の影響を大きさについて説明しています。
NVIDIA ACE のキャラクターは、シングル プレイヤー、協力プレイ、マルチプレイヤー ゲームで、敵役としても活躍します。
従来のスクリプト化されたボスとは異なり、プレイヤーの行動やアクションから継続的に学習し、最もよく使う戦略、能力、呪文に対抗することで、プレイヤーに適応を余儀なくさせます。動的に攻撃を調整してボスと戦うには、攻撃パターンを単に覚えるだけでなく、IRL スキルをレベルアップする必要があります。そして、プレイヤーの戦術に適応してくる持続的敵対勢力が存在する大規模マルチプレイヤーの世界に飛び込みましょう。無限の可能性があり、動的な AI により、1 つとして同じ戦いになることはありません。よりエキサイティングで魅力的なゲームプレイが約束されます。
Wemade Next の『MIR5』は、大人気の『Legend of Mir』の最新作で、NVIDIA ACE を使用してボス戦が強化されています。ACE 技術を使用し、ボスはプレイヤーとの以前の戦いから学習し、MMORPG でプレイヤーが使用する戦術、スキル、装備に適応します。
『MIR5』の AI は、現在対戦しているプレイヤーの装備と設定を評価し、過去の対戦と比較して勝利を収めるための最善の行動を判断します。ACE 技術の使用により、ボスとの対戦が唯一無二のものとなり、すでに倒したボスを再度倒しに行くと異なる戦闘の展開となるため、プレイヤーを飽きさせることのない、より魅力的なゲームプレイが実現します。
「NVIDIA とともに、NVIDIA ACE の自律型ゲーム キャラクターで、ゲームの新時代を切り拓きました。『MIR5』の AI ボスは、ゲーム内のマイルストーンとなる瞬間であり、毎回のプレイ セッションで唯一無二のボスとの対戦が可能になります。この技術が今後ゲームをどのように変革していくのか、今から非常に楽しみです」- Jung Soo Park 氏、Wemade Next の CEO
NVIDIA ACE を使用することで、複数の開発元が対話、遭遇、インタラクションがプレイヤーの指示と AI で生成された応答のみを通じて動作する、まったく新しいタイプのゲームプレイを開発しています。これらのキャラクターは対話だけでなく、ゲーム内で行動を起こし、プレイヤーがゲームで没入感のあるインタラクションを楽しむ新しい方法をもたらします。
Meaning Machine の『Dead Meat』は、まもなくリリース予定の殺人ミステリー ゲームです。プレイヤーは音声またはキーボードの入力で容疑者にどんなことでも質問できます。容疑者のアリバイについて問い詰めたり、人生の意義について話し合ったり、愛を告白したり。あなたの言葉には力があります。なんでも可能です。説得したり、操ったり、脅したり、魅了したりして秘密を白状させましょう。想像力を発揮すべき取調室で、唯一の限界がその想像力です。真実を白日の下にさらすため、どんな質問をしたらいいのでしょうか。
CES 2025 では、『Dead Meat』が GeForce RTX 50 シリーズ GPU 上でリアルタイムで動作し、初めてローカルで対話を生成しました。以前はクラウドで LLM を利用していましたが、NVIDIA と提携することで、Meaning Machine はデバイス上でローカルに動作するバージョンを開発しました。
NVIDIA ACE と NVIDIA Mistral-NeMo-Minitron-8B-128K 小規模言語モデル (SLM)、Eleven Labs の Text To Speech (TTS)、Open AI の Whisper 自動音声認識 (ASR) を用いて構築された Meaning MachineのGame Conscious AI™ を使用することで、『Dead Meat』の新しいバージョンは、クラウドで実現できていたのと同程度のキャラクターの深みを実現しますが、このバージョンでは対話テキストが GPU 上でローカルに生成されています。
この品質の対話を実現するために、Meaning Machine は独自の対話データを使用して NVIDIA の小規模言語モデルをファインチューニングし、そのモデルを Game Conscious™ システムに統合しました。今年後半に、あなたの内なる探偵を解き放つ準備をしてください。公開予定のデモについては、Steam 上の『Dead Meat』のページをご覧ください。
『AI People』は、GoodAI によるユニークなサンドボックス ゲームです。プレイヤーは、AI 駆動の NPC を作成してシナリオを展開します。NPC は自律的に NPC 相互、環境、プレイヤーとやり取りを行い、AI によって生成されたダイナミックな物語が創り出されます。
大規模言語モデルおよび音声認識モデルで構築され、GeForce RTX GPU でローカルにまたはクラウド上で実行される各 NPC は、環境とその内部のオブジェクトと自律的にやり取りします。これらの NPC は、学習し、感情を経験し、目標を追求し、夢を見て、会話し、プレイヤーが体験するダイナミックなストーリーを織りなします。
以下の『AI People』のビデオで、このまったく新しいゲームプレイ体験をまずご確認ください。
『フィスト 紅蓮白の闇』は、DLSS、Reflex、レイ トレーシングを搭載したメトロイドヴァニア アクション ゲームとして好評を博しました。その開発元である TiGames が、将来のプロジェクトの技術デモである『ZooPunk』を発表しました。
TiGames の AI 技術デモは、NVIDIA ACE、Audio2Face、そしてゲーム内でのデバイス上における Stable Diffusion 画像生成を初めて使用して開発されたもので、雲海の上に浮かぶキッチンでの会話やインタラクションにプレイヤーを招きます。
ミッションで収集した情報を同盟者と話し、Rayton がメカノイド帝国と戦うのを支援する新しい軍艦を設計するために桟橋に向かいます。ローカルにホストされた Stable Diffusion 画像生成機能を使用し、新しい船のデザインをリクエストし、数十個のスライダーを調整するのではなく、音声入力でペイントを調整します。
詳しく知りたい方は、TiGames のウェブサイトで今後のプロジェクトの最新情報をお待ちください。
自律型ゲーム キャラクターを動かすことに加えて、開発者は ACE 技術を利用して、NVIDIA Audio2Face によるゲームでの AI によるフェイシャル アニメーションやリップ シンクを制御することができます。Audio2Face を使用することで、これまで基本的な口の動きしかできなかったキャラクターを、開発者が簡単にアニメーション化できます。声優が自分のセリフを録音すると、それが Audio2Face に取り込まれ、キャラクターの顔、目、舌、唇がアニメーション化されるため、開発者は大幅に時間とコストを削減できます。
Survios の『Alien: Rogue Incursion』が、NVIDIA Audio2Face 技術を搭載した PCVR と PSVR2 でプレイ可能になりました。アクション ホラーのバーチャル リアリティ ゲームである『Alien: Rogue Incursion』は、恐ろしいエイリアンの世界観に完全に没入できるオリジナル ストーリーを特徴としています。この作品は、エイリアン ファンの手によるエイリアン ファンのために制作されたゲームです。
プレイヤーが生き残りをかけて旅をする際に、数人のヒューマノイドの生存者に出会いますが、そのすべてが Audio2Face により作成され、声優が録音したセリフに基づいてリアルな顔のアニメーションが生成されます。
Perfect World Games の『World of Jade Dynasty』は、Unreal Engine 5 をベースとした多人数同時参加型オンライン ロールプレイング ゲームであり、非常に好評だった同開発元の『Jade Dynasty』の続編です。このゲームでは、100 人以上のプレイヤーによる大規模な戦闘のスリル、ダンジョン探索の興奮、剣を手にして雲の向こうに飛翔する自由を体験できます。PVP、PVE、PVX のいずれの場合でも、不死の世界へとつながる独自の道を歩み出すことができます。
新しいビデオでは、開発元が中国語と英語の両方で、多数のキャラクターに NVIDIA Audio2Face を追加するプロセスを説明し、またアニメーションが録音された声優の演技から検出される、さまざまな変数に基づいて動的に調整される方法などの舞台裏を紹介しています。調整が必要な場合は、開発者が特定のシーンに合わせて対話を調整することが可能です。
生成 AI により、プレイヤーは次世代へとゲームを進化させる新しい形のゲームプレイを体験できます。業界トップのゲーム開発元は、すでに『PUBG: BATTLEGROUNDS』、『inZOI』、『MIR5』、『NARAKA: BLADEPOINT MOBILE PC VERSION』などの看板タイトルで、その実現可能な様子を披露し始めています。これらの例は氷山の一角に過ぎません。2025 年の待望のリリースをご期待ください。
NVIDIA ACE、今後の開発、早期アクセス プログラムの詳細をご覧ください。また、ゲームやアプリを向上させ、PC 業界を進化させる新しいイノベーションを実現する方法については、その他のすべての GeForce RTX 50 シリーズの発表をすべてご確認ください。